SFマガジン 11月号

今日は、朝からある程度集中して仕事をすることが出来たので、予想よりも多く仕事を片付けることに成功する。で、さすがにこの時間になるとちょっとまったりしてきたので、あらかた読み終わったSFマガジンの内容と感想を。今回は「地球環境問題SF」特集。

S-Fマガジン 2005年 11月号

S-Fマガジン 2005年 11月号

人類が直面する最大の課題 / マイクル・クライトン(Michael Crichton)

これは小説ではなく、2003年9月15日にサンフランシスコで行われたマイクル・クライトンの講演なんだけど、僕にとっては結構衝撃的、かつ、痛快な内容であった。
クライトン環境保護主義を宗教だと説き、その主義主張は幻想であり、根拠とされている科学的事実はその多くが誤りであるといっている。
たとえば、現在の環境悪化を憂い、すばらしき過去をエデンとする人たちに対して、

...いったいどの時代をさしてエデンなどというのでしょう?幼児の死亡率が80%を超えていた時代、5人に4人までが5歳にならないうちに死んでいた時代のことですか?出産時に6人にひとりの母親が死んでいた時代のことですか?平均寿命が40歳であった時代のことですか?1世紀前のアメリカがそうであったように?...

と痛烈に問いかける。また、環境保護主義者は、たかだか20年前までは声高に叫ばれていた、人口爆発問題や化石燃料の枯渇、世界の砂漠化等が全く起こっていないことを認めようとせず、危機を煽る情報ばかりを吸収し、偏った知識を根拠に地球の温暖化等の問題を新たな問題として叫んでいることを憂う。
こう書くと、クライトンは「地球の環境問題なんて嘘っぱちだ」と言っているように見えるかもしれないけど、そうではない。もっともらしい「疑似科学」を面白おかしく伝えるメディアや、それを利用する学者、政治家、役人とそれを無批判に信仰する人たちがおかしいと言っているのだ。
ちょっと過激ではあるけど、面白い内容だった。

エリカの海(Harpoon) / G・デイヴィッド・ノードリイ(G.David Nordley)

1947年アメリカ生まれの科学者作家、G・デイヴィッド・ノードリイの短編。
捕鯨に反対する環境保護団体に所属するエリカは、日々捕鯨船を追いかけ、その邪魔をしてきた。ある日、いつものように捕鯨船を追いかけていたが、目前で鯨を捕獲されてしまう。せめてその残虐行為をカメラに納めようと撮影していると、鯨の背中に何者かに彫られた模様のようなものが...
この物語、臨場感はなかなかイイんだけど、オチがわかりにくい。ま、何回読んでもわからないという類のものではないので、イイのかもしれないけど、物語のテンポが良いだけにちょっと残念。
初出は2004年。

ベアーズ・ベイビー(The Bear’s Baby) / ジュディス・モフィット(Judith Moffett)

1942年アメリカ生まれのこちらは女性作家、ジュディス・モフィットの中編。
ヘフン人と呼ばれる異星人に占領された地球。彼らヘフン人は、人類が地球環境に与えたダメージを戒め、地球の環境回復プログラムを強要する。彼らの環境回復プログラムの下で野生の熊の生態を調査しているデニーは、ある日突然ヘフン人から異動を伝えられる。その異動に納得がいかないデニーは、密かに自分の受け持ちだった熊の巣へ向かうが....
異星人に占領された地球というなかなかハードな環境なんだけど、制約がありつつも人類が案外普通に暮らしているところや、一見真っ当なこと行っているように見える異星人にもウラがあるところなど、なかなか面白い。ただ、これも結末は結構難解。環境SFって難しいね。
初出は2003年。

進党 日本、民詠歌 / 町井 登志夫

2001年に「今池電波聖ゴミマリア」で小松左京賞を受賞した作家の短編。
ワンマンな総理が「民意を問う」となかば八つ当たり的に解散した結果、選挙で大勝利し、日本は何故か「EU加盟」に向けて動き出した。そう、ホントに動き出したのだ....
この小説、今年のいつ頃書いたものか知らないけど、実にタイムリーな内容。しかも、全体として奇天烈なんだけど、その背景のありそうでなさそうな感がすばらしい。ただただ、笑って読める一品。

ユビキタス / 草上 仁

なんだか久々に読む草上仁。
時代は2035年、人は生まれたときからその体に生体レベルで融合するコンピューターを組み込み、意識せずとも膨大なネットワーク空間から様々な情報を受け取ることやネットワークを通じてコマンドを送ることを可能としていた。そんな世界で起きた、ある1分間の話。
イイねぇ...すんなりと読めて、かつ、奥深さを感じる作品。
アナタは丸1日ケータイが使えなくても平気ですか?