ミトコンドリアに支配される心

なんとなく、まったりとした時間が流れ始めたので、たまには時事ネタでも書いてみよう。
独立行政法人 理化学研究所は、本日、躁鬱病ミトコンドリア機能障害が関連している可能性があることを発表した。
404 Not Found | 理化学研究所
今までも躁鬱病患者にミトコンドリア機能障害が見られることは知られていたらしいんだけど、今回研究チームは、マウスに異常なミトコンドリアDNAを合成する酵素の遺伝子を導入し、意図的に脳にミトコンドリア機能障害を誘発したモデルマウスを作って、その行動の詳細を解析したらしい。
その結果、躁鬱病患者に見られる不眠の症状などが顕著に見られ、治療薬として使われる「リチウム」の投与により症状が改善し、投薬すると悪化する「三環系抗うつ薬」の投与により症状が悪化するなど、ミトコンドリア機能障害と躁鬱病が強く関係していることが確認されたそうだ。
そもそもミトコンドリアってのは、人間を含む真核生物の細胞に含まれる細胞小器官で、酸素からエネルギー(ATP*1)を作り出す重要な役目を担っているモノ。ところが、このミトコンドリア、その細胞の核ゲノムとは異なる独立したDNAをもつ言わば細胞に寄生するバクテリアのような存在。しかも、生物はその母親からしミトコンドリアDNAを引き継がない性質を持っており、このことから、人間のミトコンドリアを追跡することによって、人類すべてのミトコンドリアDNAの「母親」*2が、アフリカのある女性であることが判明し、ミトコンドリア・イヴという呼称で呼ばれることとなった。
で、この寄生のような状態にあるという事実とミトコンドリア・イヴ説に基づき、1995年に日本ホラー小説大賞を受賞し、映画化やゲーム化もされた瀬名秀明の「パラサイト・イヴ」が生まれた。

パラサイト・イヴ (角川ホラー文庫)

パラサイト・イヴ (角川ホラー文庫)

この「パラサイト・イヴ」は、宿主の細胞の支配下にあったミトコンドリアが反乱を起こし、宿主を支配するという話だったけど、今回の躁鬱病、何か同じようなモノを感じないだろうか?さすがに人格を支配するところまでは到っていないけど、躁鬱病に見られるミトコンドリア機能障害って、人間から見れば機能障害なのかもしれないけど、ミトコンドリアが何かの意志を持って、宿主を攻撃している....というのは考えすぎかな。
さて、僕も自分のミトコンドリアのご機嫌を窺いながら、そろそろ帰ろっと。

*1:アデノシン三リン酸

*2:あくまでミトコンドリアの話で、核の遺伝情報がすべてこの女性に由来するわけではない。