最近読んだ短編

休暇を取得したのと最近仕事が暇で若干時間を作ることが出来たので、たまった月刊誌を固め読みする。
僕は、毎月SFマガジンとミステリマガジンを購読してるんだけど、どうしてもミステリマガジンの方が滞りがちになる。SFは比較的気軽に読んでもストーリーを見失うことはないんだけど、推理モノやミステリはそうも行かないモノが多いし、短編といってもある程度の長さがあるモノが多いからだ。今回はとりあえず読み終えたSFマガジンの中で印象に残ったモノの紹介と感想を短く。

アンジー・クレーマーにさよならを / 新城カズマ / SFマガジン7月号

比較的近い未来の女学生の日常と古代スパルタ王権の盛衰を語りながら、さまざまな情報を交換し、ついにはジーン(遺伝子情報)まで交換してしまう社会において、それを規制しようとする勢力から飛翔する女学生を描いたモノ(だと思う...)
スミマセン、僕にはちょっと難しかった。特に古代スパルタの盛衰について書かれている部分が、この世界の女学生の社会にどう当てはまるのかが最後までよくわからなかった。もっかい読み直してみます...

遊星からのカチョーフウゲツ / 桜坂 洋 / SFマガジン7月号

「さいたまチェーンソー少女」の続編で「さいたま...」で主人公だった霧崎文緒の親友小田切薫子が主人公。
親友の霧崎文緒に一つだけ嘘をついている小田切薫子は、そのことを胸の内に必死に留め生活してきた。そこへある日転校生がやってくるが、その転校生は、なんと薫子の秘密を脅かす存在であった...
まず、物語とは全く関係ないんだけど、挿絵が「西島大介」。これがイイ。ホントこの人の絵はSFしててイイ。大好きです。
さて、物語ですが、なんというか小田切薫子のような一途な思いって、誰でももっているんだと思うんだけど、その思いが脅かされたときに、いわゆる社会常識や道徳なんてモノを取り去ったらこんな行動をするんだろうなという物語。よくわかるし、面白い。

宇宙色のブーケ / 西島大介 / SFマガジン7月号

僕の好きな、西島大介の読み切り漫画。
結婚式の直前に世界が滅んでしまった女の子が、それでも結婚式を行おうと彼のもとに向かう...
切ない物語です。ラストは、ちょっと不満。

零式 / 海猫沢めろん / SFマガジン7月号(前編)、SFマガジン9月号(後編)

たぶん僕らの世界とは違う世界。大戦以来、人々は外界から隔離された自閉都市において生活していた。磁気コイルで駆動するリニアマシンが普及する中、独りレシプロマシンでチキンレースに挑み、自らの衝動を発散させていた「朔夜」は、ある日、「夏月」という少女に出会う。「夏月」は「朔夜」に自分を連れて町の外へ逃げることを強要する。伝説の飛行機「零式」に乗って....
なかなか面白いです。でもストーリー的には何となくアニメっぽい感じがします。ま、それでもイイのかな...

人類戦線 / ケン・マクラウド(Ken Mcleod) / SFマガジン8月号

第二次世界大戦の後に第三次世界大戦が起こっている世界。世はいまだに資本主義と共産主義が戦っていた。「わたし」ことジョンは少年の頃、医者である父と一緒に、NATO軍の爆撃機が不時着するところ目撃する。そこから運び出された乗員は、子供のように見えたが....
中盤までは、SFの雰囲気を持ちつつも全然SFらしさがない物語。後半に種明かしがありSFにはなるが、どうも僕はイデオロギーの対立を描くこの辺の物語は苦手。

コールダー・ウォー / チャールズ・ストロス(Charles Stross) / SFマガジン8月号

これは、ソビエトアメリカの冷戦時代が続いた上に、イスラム原理主義勢力が加わり三つ巴になって戦っている世界のお話。お互いに相手を上回る兵器を求めた末に行き着いた兵器は、とても人間の手に負えるモノではなかった....
ま、ここまで人間は愚かかなぁ...と思う作品。読み物としては面白い。

壁の中 / 藤崎慎吾 /SFマガジン9月号

技術の進歩により、自らのゲノムを常にアップデートすることによって若さを保つことが出来る社会。しかしそれは膨大な費用が必要であり、一部の選ばれた人間のみがうけられるモノであった。ある日、防犯システムの異常動作の解消のために、とある屋敷を訪れた先端警備保障の「辻」とその相棒のロボット犬「カイチ」は、その屋敷の怪現象の解明に当たるが....
バビル2世の「ロデム」を彷彿とさせる「カイチ」が面白い。シリーズものであるようなので、今後に期待。

フリーランチの時代 / 小川一水 / SFマガジン9月号

火星調査隊が出会った、生命体とのファーストコンタクトは....
最高!面白い。イラストも僕の好きな「西島大介」だし、文句なしです。しかし、人間の定義って難しいねぇ....

まだ見ぬ冬の悲しみも / 山本 弘/SFマガジン9月号

物語はCHILDEX(時間的同一性交換)によって過去へ時間旅行をする男の話。一見完璧な理論に思えるこの方法だったが、これには大きな落とし穴が...
古典的なテーマを上手に使い、斬新な理論で時間旅行を実現している。しかしそんな時代においても男と女ってのは.....