音楽を聴かせて欲しい....

インプレスPC Watchで「■元麻布春男の週刊PCホットライン■コピープロテクションCDが招く災い」と題されたコラムを読み、深く深く頷いてしまった。
元麻布春男の週刊PCホットライン
記事の書き出しは、SONY BMGがCopy Protected CDに採用した専用プレーヤーといっしょに仕込んだ「rootkit」というある種のソフトウェアに関する問題を採り上げたモノなんだけど、中段以降で「なぜ音楽が売れないのか」ということに触れていて、それが実に的を射た内容なのである。
ちょっと長く引用するけど、

 しかし、もっと本質的な問題は、音楽そのものが以前ほど売れなくなっている、ということだ。レコード会社はこれを違法コピーのせいにしがちだが、筆者はそればかりだとは思わない。最大の原因は、音楽に触れる機会が減っていることだ(音楽そのものにも要因はあると思うが、それは「最大」ではないと思う)。
 筆者が若かった頃、音楽に触れる機会はもっと多かったように思う。TVの音楽番組は今より多かったし、何よりラジオが元気だった。'70年代の後半、NHK FMの夜7時15分から8時まで、丸ごと洋楽のLPをかける番組があり、筆者など一生懸命カセットテープに録音し、その中から今月はどのアルバムをレコードとして買うか悩んだものだ。
 当時はこうした行為をエアチェックと称し、そのための雑誌(FM誌)も4誌ほどあった。それでレコードの売り上げが減ったのかどうかは分からない。確かに、エアチェックテープで事足れり、とするユーザーもいたことだろうが、筆者のように限られた予算の中からレコードを購入する重要な指針としていたリスナーも多かったハズだ。現在、アルバムを丸ごと聞かせてくれる定期番組はあるのだろうか。レコード店の試聴コーナーでは、誰が使ったのか分からないヘッドフォンを装着することに抵抗のある人も少なくないに違いない。
 AppleiTMSは、音楽のオンライン販売としては世界でNo.1である。が、筆者が不満なのは、試聴が30秒に限られることだ。30秒ですべてを理解しろというのは無理な話である。レコード会社にお願いしたいのは、すべての楽曲を丸ごと、自宅で試聴できるようにして欲しい、ということだ。
 24kbpsや32kbpsという低ビットレート(おそらくAMラジオくらいのクオリティだろう)でもいいから、丸ごとすべて聞かせて欲しい。32kbpsでダウンロードしたからCDは要らないという人は、DRMをつけようが、CCCDだろうが、音楽を買わない人である。そういう人に何をしても無駄だ。買うつもりのない人に無理やり買わせる方策を考えるより、潜在的に買いたいと思っている人に、CDを買わせるようにしむけた方がうまくいく。低ビットレートの音楽については、クレジットを明確にすることを条件に、Podcast等に使うことも認めればいい。とにかく音楽に触れてもらう機会を増やすこと。それなしに音楽の売り上げは増えないと思う。
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まさにその通りである。
この間のiPodの「私的録音補償金」の問題に関するやりとりを見てもわかるように、ギョーカイはその権利を守ることに固執するばかりに、リスナーにいかに音楽を触れさせるかということについて、あまりにも無頓着になってしまった。FMでのフルコーラス放送をやめ、MIDIに課金し、デジタル機器にも課金した上でプロテクトをかける。これでは、あまりにもギョーカイはリスナーの欲するモノを理解していないといわざるを得ない。
このままでは、元麻布春男氏の言うとおり、音楽の売り上げは増えず、音楽文化の衰退は止めることが出来なくなってしまうんだろうけど、さて、どうすればいいのやら...