クリスタルサイレンス(上・下) / 藤崎慎吾

なんか時間だけ過ぎていくねぇ...

クリスタルサイレンス〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)

クリスタルサイレンス〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)

クリスタルサイレンス〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)

クリスタルサイレンス〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)

2071年、テラ・フォーミングが進む火星の北極冠で、高等生物の物と思われる死骸が発掘された。その死骸の分布状況から知的生命体の食料となっていた可能性が指摘され、その調査のために生命考古学者のアスカイ・サヤに火星行きが打診される。恋人のケレン・スーと別れることとなるため、躊躇していたサヤであるが、結局はその好奇心を満たすために火星へ向かう。しかし火星は、開発先進国と後発国が絶えず小規模の戦闘を行っていたり、謎の疫病が蔓延する危険な世界だった...
...と、このようなあらすじを書くと、地球外生命体とのファースト・コンタクト物のSFだと思われるかもしれないけど(実は僕もそうだった)、確かにそういった部分もあるが、物語の中心は電子ネットワークの世界である。著者は、無法地帯的なインターネットの爆発的な普及後、それとは別に国ごとの倫理観や宗教観を維持した新たな超高速ネットワークの普及を示唆しており、今回の物語はそのネットワーク上の存在を中心に物語が展開する。あまり書くとネタバレになってしまいそうなので止めておくけど、久々にドキドキしながら読んだ本だった。
なお、この「クリスタルサイレンス」は、1999年10月に朝日ソノラマから著者の長編デビュー作として刊行され、「ベストSF1999」国内篇1位にもなっていて、今回「ハイドゥナン」という新作が早川書房から出版されるにあたり、ハヤカワ文庫で再版となったらしい。恥ずかしながら全然知りませんでした。
このところ、小説を読んでもそれに伴って新しい興味が湧くと言うことはなかったんだけど、今回は色々と考えさせられ「脳の構造」や「意識の定義」についての文献をインターネットで漁り始めている次第。何かまとまったら書いてみたいと思う。