SFマガジン 2006年3月号

やーっと読み終わった。あっちこっちと浮気した結果、なかなか読み終わらなかった3月号をやっと読み終える*1

S-Fマガジン 2006年 03月号

S-Fマガジン 2006年 03月号

では、収録作品を簡単に紹介しよう。今回は2005年度英米SF受賞作特集。

妖精のハンドバック(The Faery Handbag) / ケリー・リンク(Kelly Link)

2005年ヒューゴーローカス賞ノヴェレット部門受賞。
主人公である「あたし」は、毎週末ボストンの「衣料品街」の地下で無くしてしまった祖母の形見「妖精のハンドバック」を探している。なぜならそのハンドバックの中には祖母の故郷であるバルデツィヴルレキスタンの村人と祖父、そして恋人のジェイクが暮らしているから....
SFというより、おとぎ話的な内容。でも、内容には著者の男性に対する辛辣な皮肉が込められているかな。

ロンドンにおける"ある出来事"の報告(Reports of Certain Events in London) / チャイナ・ミエヴィル(China Mieville)

2005年ローカス賞ノヴェレット部門受賞。
作家チャイナ・ミエヴィルのもとにある一通の手紙が届く。その手紙はチャールズ・メルヴィル宛のものが誤って届いたものだったが、気がつかずに封を切った封筒の中には、ロンドンにおけるある出来事に関する様々な書類が入っていた....
非常にミステリアスで難解。いまだに自分の理解が正しいかどうかが怪しい。ただ、タイポグラフィを駆使した文体は、非常に興味深く、難解なわりに読むのは苦痛ではなかった。

遺す言葉(Coming to Terms) / アイリーン・ガン(Eileen Gunn)

2005年ネビュラ賞ショート・ストーリー部門受賞。
とある作家が亡くなり、没交渉だった娘が遺品の整理にアパートを訪れる。そこには、多くの本とメモが遺されていた。父を理解できずにいた娘は、そのメモを追うことによって作家である父の生活と死を受け入れていく...
実は本作が読むのに一番難儀した。内容はSFではないけど、なかなか奥の深い文章だった。非常に印象に残った文を紹介する。

子供のころ、彼女は読書が好きだった。だが読書はあまりにたくさんの時間を取るし、そのあいだずっとほかの誰かの頭のなかにはいりこんで過ごすこととなる。映画やテレビなら、ほかの人たちといっしょに見ることができる。煎じつめるとそういうことだ。いったいどれだけの時間、一人きりで...本だけを友として...いたいのか、ということだ。

まぁ、そういうことだよなぁ。

チップ軍曹(Sergeant Chip) / ブラッドリー・デントン(Bradley Denton)

シオドア・スタージョン記念賞受賞。
インプラントによって人間との意思疎通能力をもった軍用犬「K−9」のチップ軍曹は、彼が尊敬し、機械の力を借りなくても意思の疎通が可能である上官のダイアル大尉と共に幸せな生活を送っていた。ある日、彼らに前線への出動命令が下った。しかし、前線で彼らの驚異となったのは敵ではなく、友軍だった...
今回紹介している作品の中では、一番SFらしい作品。とはいえ、戦争SFなのであまり爽快な読み物ではない。しかも、題材はベトナム戦争時にも行われたと噂される、プロパガンダのための友軍切り捨て。ちょっと重いです。

*1:実は特大号の4月号も半分ぐらい読み終わり、5月号もちょっと読んでたりする...