天涯の砦 / 小川一水

長い通勤時間の3日分を利用して読み終えた本。なんかこのところ忙しかったので久々に読み終えた本になった。

天涯の砦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

天涯の砦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

近未来、まだ一部の人間だけではあるけど月に人間が居住し、月と地球の間には定期的に往還船があり、地球の近衛星軌道上には観光やらなんやらで比較的気軽にいけるようになっている世界。地球と月を中継する巨大な軌道ステーション「望天」において壊滅的な事故がおこり、「望天」の一部区画と月往還船「わかたけ」からなる構造体が多数の破片や死体共に漂流を始める。その構造体の内部には、奇跡的に数人の生存者がいたが、互いの行き来は出来ず、通気ダクトを介しての会話のみが唯一のコミュニケーション手段だった。彼らは、それぞれの思惑がかみ合わないまま救助を待っていたが、その構造体は徐々にに大気圏に向け高度を落としていた...
えー、序盤から登場人物が可哀相になるくらい事態は悪化していき、個性的な登場人物が如何にそこに活路見いだすのかというところがこの作者得意の緻密なハード描写、環境描写によって描かれており、とても面白い。中盤以降はヒューマン・ドラマ的な部分も多くなるけど、あまり「くさく」ならずに描かれてるし、好感は持てた。でも、一部の登場人物は...場面的にはわからないでもないけど安易かな。
全般に読みやすく読後感もイイので、何となく機械モノが好きだけどあまりハードなのは....という方にはオススメ。