星 新一〜1001話をつくった人〜 / 最相葉月

今日の帰りの電車でやっと読み終えた本がある。

星新一 一〇〇一話をつくった人

星新一 一〇〇一話をつくった人

5月下旬に購入し、もっと早く読み終えるつもりだったんだけど、四六判と大きい本で、しかも分厚いもんだから、朝のラッシュ時にはなかなか電車の中で開くワケにも行かず、帰りの電車で、しかも体力的に余裕のあるときにしか読まなかったので、読了までこんなにもかかってしまった。


この本はショートショートの大家「星新一」の生涯を描いたノンフィクションである。


さて、いきなりで恐縮だけど僕は偉人の伝記やら歴史物といったモノにまったく興味がない。高校生の頃、日本史と世界史のいずれかを洗濯しなければいけなくて「漢字の名前を覚えるのは面倒」というだけで世界史を選択するくらい*1、自分にとってはどーでも良い分野なのである。何故か?それは僕が歴史を学ぶ意義がわからないから。よく「歴史に学ぶ」だの「過去に学ぶ」という人たちがいるけど、僕はそれがわからない。過去から継続しているモノが積み重なっていくというのはわかる。だけど、歴史のある一部分だけを切り取って、そこにも学ぶモノが....といわれても、いったい何を学べるのかがわからない*2。だから、自分自身結構本を読む方だとは思っているけど、歴史物にはまったく興味がないのである。


そこでこの本である。本来であれば僕が手に取る分野ではないんだけど、小学生の頃、母から薦められ読んだ「星新一」のショートショートにハマッたことがあったんだけど、今の今まで「星新一」本人のことは全く知らなかったので、「星新一」の人物像に興味を持ち、手に取った次第。
なので、この本を読み始めてすぐ、「星新一」が戦前の大企業「星製薬」の御曹司であることを知り、大いに驚く。へぇ〜そんな人だんったんだである。しかも戦後、作家になったのも志していたワケではなく、他の道が徐々に閉ざされていき何となく成りゆきだったこと、SFというジャンルが非常に冷遇され、その後もショートショートという分野が文学という世界で冷遇され、「星新一」がそれに苦悩していたこと、SF黎明期の「星新一」を中心とする作家、編集者、同人の動きなど、SFというジャンルが好きな割には歴史嫌いから全く知らなかったことが、膨大な取材を元に精緻かつ客観的に書かれていて、しかもかなり特異な状態。歴史嫌いの僕でもその内容に引き込まれずにはいられませんでした。しかも、そしてそんな事実によって見えてくる人間「星新一」の衝撃。いや、素晴らしい本でした。


この本を読み終えて最初に思ったのは、「お袋に読ませてあげたかったな」である。
僕の母って人は、無類の「本」好きで特にSF・推理には目のない人だったので、僕が子供の頃から図書館に行くと常に10数冊の本を借りてきて、3日くらいで読み終えてはまた借りに行くというのを繰り返していた。だから子供ながらに、「この人は何時寝てるのかな?」なんて思ったりしたもんでした。そして、その母が小学生の僕に薦めたのが「星新一」や「眉村卓」。他にも「小松左京」や「筒井康隆」も薦められたけど、そちらはあまり好きになれず、「星新一」ばかり読んでいたような気がします。中学生になると「半村良」や「平井和正」なんかを薦められ、母と競いながら読み終えた後はその内容について夜通し議論をするという、まあ端から見れば変な母子でした。
で、この本は、そんな母の青春時代と重なるであろうSF黎明期の記録が仔細に書かれているので、僕なんかより懐かしく感情を移入して読め、そして楽しめるんじゃないかなと。そんな風に思えたから。
来月に母の20回目の命日を控えてるし、明日の朝には遺影の前にこの本を置いてみようかな...


余談ですが、イイ本を読んだ後にブログを書くとどうにも自分の文章の稚拙さが目について嫌になるね...

*1:しかし、中国史に入ったところで嫌と言うくらい漢字が出てきて沈没するんだけどね...

*2:あくまで持論です。以前この話題で友人と喧嘩になったことがあるので...